右脳のドロップキッカー

右脳のドロップキッカー

引用元:pya!(ネタサイト)
このシリーズTXTは、私が学生時代に体験した、私の人生に起きた最も大きな、奇想天外な事件を書き記したものです。

先に申し上げておきますと、この事件は解決済みでございます。

よって、特定の団体や人物が皆様の頭の中で「これかな」と思いついても

たいてい違いますので決して安易に想像で書き記さないようお願いいたします。

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KENJIさんは、私が幼い頃から私のことを見守ってくれた恩人であります。

年齢は同じですが、私にとってはKENJIさんのすばやく合理的な判断は、全て私の学ぶべき姿として常に目に映ります。

KENJIさんも、私とともに学生時代は空手家でありました。

その行動と技能は、美化されたあと私の中で理想化されて醸成され、そして時に内なる世界から表に出てまいります。

もちろん、多様な局面で見かけたあらゆる人々の素晴らしい行動は全て私の模範となっており、内なる世界への働きかけとなっております。

そんな私の恩人であるKENJIさんに、突然悲しい出来事が起こりました。

KENJIさんの妹、Kさんが突然蒸発してしまったのです。

化粧品の入った手荷物を残したまま、突然です。

KENJIさんは健太郎君と共に彼女を探しに方々へ出かけました。

健太郎君ならば、彼女の残した荷物の匂いからなにか手がかりを

見つけ出せるかもしれなかったからです。

しかし健太郎君に何も反応はありません。

恩人であるKENJIさんに、そして私も何度も会っている妹さんに、そのような重大なことが起きたわけですから、何か力になりたい。

私もその調査行に何度も同行し、その謎に迫ろうとしましたがまったく手がかりがなく、KENJIさんはご両親とともにKさんの捜索願いを出してもなんら進展しない毎日にイライラしはじめておりました。

くだらないことで衝突してしまうKENJIさんのご家族へも、私は何の力にもなれず黙って見ているしかありませんでした。

彼女の残したバッグは、化粧品、PHS、そして何故か財布を入れっぱなし。

財布の中の所持金は小銭だらけで千円余り。

化粧品を持って行こうとしていたことから、どこかへ行こうとしていたと推察しました。

しかし所持金が少ないのでそれも謎です。

PHSの着信記録は2日前に自宅との通信を行っていたものや、発信記録には彼女の友人の女性のものだけ。

もしかしたら、いつもそのような状態にしているバッグなのかもしれず、準備後にその状態にしていたのかどうかも不明です。

手がかりを探そうとしても、その事件はあまりにも突然すぎて、残された彼女の持ち物の中から探そうにも、何もヒントになるものが見つかりません。

誘拐事件という考えで、私たちは捜索を行ったのです。

車等で誘拐された瞬間の場所が分かれば、そこで当時見ていた人を探す、という方針です。

しかしどうやらそこに間違いがあると考えざるを得ません。

私たちは、捜索願いを出した警察署へ相談へ行きましたが、刑事さんたちはお忙しく、数回伺いましたが

あまり親身になって聞いていただけません。

何かを見落としている感じがします。それが何なのか、警察関係者でないと分からないはずのことがあると睨み、刑事さんたちが夕方になって勤務時間を終えて警察署から出てくるところを見計らい、「どうか話を聞いてください!」と取り付きますが、勤務時間外であることを理由に、相談には乗ってくれません。

どう考えてもこれはさすがに若気の至りであります。

刑事さんたちにはご迷惑をおかけしました。

私たちは途方に暮れながら地元の駅前に差し掛かりだめで元々と思いながら、暇そうにしていた交番の巡査部長に話しかけてみました。謎かけです。20歳の女性が、突然蒸発する。

そのような事件にはどのようなパターンがあるのか。

「意外と駆け落ちとか多いよね?(´・ω・`)」

「「それは思いつかなかったッ」」Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)

「まずは持ち物に男関係が無いかどうか調べてみたら?

 PHSとかも2つ持ったりしてる子とかいるしね(´・ω・`)」

「「ありがとうございましたあああああああ」」(゚Д゚;)(゚Д゚;)

そうして最初の壁は、予想外でしたが駅前交番の巡査部長が打ち破りました。

すぐにKENJIさんの家へ戻って、妹さんの机の中を一斉捜索です。

すると、出てきました。謎の日記(?)です。

それまで、Kさんが自ら誰かに付いていくことで家族の前から連絡も無しに姿を消すなど、まったく考えもしていなかった私たちは

Kさんの机の中にある日記にヒントがあることに、辿りつくはずもありませんでした。

しかし視点を変えればなんらかの痕跡があるはずです。

そう思った私たちはKさんの日記を手に入れ、固唾を飲み込んでその中を覗き見ました。

年頃の女性の日記を見るというのは大変な罪悪感がありましたが、緊急事態ですので仕方がありません。

中身は「なんだこれは、筆不精すぎる」という日記であり、意味の分からない言葉が、同じく意味の繋がらない日程に渡ってところどころ書き記されているだけのものでした。

ところどころ、日本語ですらありません。何かミミズ文字です。

漢字も混じっています。謎です。しかしどこかで見たことがある文字。

私がKENJIさんと2人で黙り込んでしかめっ面でじっと見ていると、「彼」が突然謎を解いたようで、しゃべり始めました。

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この字を見て全て理解できた。

まずKさんの友達は何か口止めをされているはずなので、Kさんの友達に対し、Kさんが2つめのPHSを持っていたかどうかだけの裏をとる。

居場所について口止めはされていても、問題ないと思うだろうからこれはすぐに裏が取れるはずだ。

次に、2つめのPHSの会社はおそらく1つめと同一の可能性が高く、現在こちらに料金通知が送られてきていないということはPHS会社へ住所変更を申し出ているか、別住所で新規登録しているはずだ。

PHS会社に連絡をし、1つめのPHS番号が現在生きているので、2つめの番号の方の住所を確認して統合したいと申し出れば、別の住所で登録されている事実だけは分かるかもしれないが、本人でなければ住所は言えないということになるだろう。

そこまで行けたら、警察の出番だ。

まったく身動きすらしていない警察へ、2つめのPHSが生きていることを伝え、公権力を使用して住所を割り出させる。

しかしその段階で我々へ住所を教えることは無いはずだ。

その後、警察が「事件性はありません」と言って、判明した住所を教えようとしない事態になると思われるので、「素行だけ調べられればいいので別に住所はいらない」と言って懇意の探偵を紹介してもらうのだ。

探偵へはKENJIさんと親御さんが素行調査を依頼し、面の割れていない私がその探偵自体を尾行するのだ。

そしてその探偵が張り込みをした場所、そ こ が 居 場 所 だ !

そこはおそらく「宗教関係の施設」やその近所だろう。

これは梵字だ。意味は不動明王だ。密教だな。

この字は修学旅行で行った日光のお土産のお守りに入っていたぞ。

ここに世尊って書いてあるのはお釈迦様のことだな。

ここにある漢字は仏教の一節だ。だがこちらはキリスト教系だ。

それからここ、目次でもないのに「もくじ37」って書いてあるだろう。

これは「もくじろク」と書こうとしていて、「黙示録(モクシロク)」のことじゃないか?

これはセミナーか何かで聞いていた言葉を走り書きしたんだ。

こういう多宗教に渡る節操の無さは新興宗教などにはありがちだ。

ここを出るときに痕跡を残さないようにしているのに、この日記は意味の不明な単語しか書いていないからいいだろうと思ったのか、多分置き忘れてしまったんだ。

ついに糸口を見つけたぞ。

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KENJIさんが  °°( Д ;) となっているので私が今、何か言ったのかと聞くと、上記の内容を一気にしゃべったことが分かりました。

2人で「彼」の言っていた手順を何度も確認し、親御さんには段階を進むにつれて少しずつ話していくことにして、2人だけでそのまんま実行しようということになりました。

飼い犬の健太郎君の度重なる出動は何だったんだ(´;ω;`)

しかしそれは後々、その出動が役立つことになります。

「彼」は警察側の動きについては変な予想していましたが全くその通り、今まで目に見える動きをとらなかった刑事さんが、PHSの段になって目の色を変えました。

そして探偵さんを紹介してくれるところまで、完全に予想通りに進行。

刑事と探偵が懇意にしているなんぞドラマの中だけの話かと思っていたら家出した子供の素行調査というのはよくある話らしく、「なんなら探偵でも紹介しましょうか」というのは常套句だそうです。

「親父たちは黙って俺に任せてくれ。実はSK8Sが探偵を尾行するつもりなんだ」

そうやって親御さんへ明かすKENJIさんと、驚きの表情の後、真剣な目で頷く親御さん。

「SK8S君、頼んだぞ!」とがっしり両拳を力いっぱい握られ、押入れに入る私。

探偵の顔をよく覚える必要があるため、押入れに篭ります。

そして探偵さんがやってまいりました。

「住所まで知って押しかけようとは思わないので、妹が今ちゃんと幸せに暮らしているのかどうかだけ、調べて欲しいのです。だいたい聞いているとは思いますが、警察の方から妹の住所を教えてもらえていません。

 住所を教えることは警察の仕事ではないし、本人も家族へ伝えないように申し出ているそうですので。

 ということは私たちがあなたへ聞いても、多分だめですよね。

 黙って家出はしていても事件性は無いということなので、安心していますが、両親ももう怒ってはおりませんので、無事に生活しているかどうかだけでも、どうしても両親に知って欲しいのです。調査をお願いできますか?」

何と物分りのいい依頼主かとちょっと驚いている探偵さん。

元警察の方であるというその探偵さんは「民事不介入のため」に警察もその住所を教えられないのだろうと刑事さんのかわりに説明し、ご両親の不安をできるだけ募らせないように話をまとめながら、調査前代金を懐にしまってKENJIさん宅を後にしました。

押入れから出てきた私は、まず居間の机に置かれた探偵さんの名刺を確認し、KENJIさんと親御さんに目で合図しながら、玄関を飛び出して行きました。

探偵さんは車で来ていたらしく、運転席にその探偵さんを乗せた車が走り去るのを玄関先から隠れて確認しました。すかさずナンバープレートを覚えます。

一旦探偵さんが、事務所(兼自宅)へ帰ることを予想した私は、電車でその場所へ。まだ車は戻ってきていません。

周辺でコンビニを探し、飲み物などでも買おうかと思った矢先、そのコンビニに探偵さんの車が。買い物をしているのでしょう。

レジでお金を払っているところです。ものすごく幸運です。

既に事務所へ戻っていたのでした。その後、物資補給をして張り込みに備えるのでしょう。なんとも行動の早い方です。

タクシーをすぐに探し、そのコンビニが見渡せる路地に入ってくれと頼みます。

「おッ、お兄さん刑事の卵!?何でも言ってくださいよ!(`・ω・´)」

「え、えっと、多分違いますけど、あの人は追わなければならない男なんです(´Д`;)」

「今出てきたあいつかあ。まさか、凶悪犯人ですか!?(`・ω・´)」

「え、え、えっと、女の居所を知っているのが奴なんです(´Д`;)」

「まかせてくださいよ!今までにも同じように刑事を1回乗せてるんですよ!(゚∀゚)」

「あ、う、よろしくお願いします(´Д`;)」

こういう説明が異常なほど下手糞なのが私です。

説明が面倒になったので勘違いはそのままにしておきました。

何も言わなくてもつかず離れず見失わず、探偵さんの車を追ってくれます。さすがベテラン運転手さん、見事な技術です。

しかし「拉致監禁ですかねこりゃ(゚∀゚)」と勘違いに花が咲いております。

15分ほど走っただけで、探偵さんの車は住宅街に入り、うろうろし始めました。

「この辺があいつの目的地みたいですよ!(゚∀゚)」

「あ、じゃあこの辺で降ろしてください(´・ω・`)」

「頑張ってなお兄さん!何かあったらまた私を呼んでくださいよ!(゚∀゚)」

張り切りすぎの運転手さんから名刺をいただき、タクシーを見送った後、電柱の住所案内に目をやります。KENJIさん宅から3~40kmほど離れた場所のようです。

ここまで、運が良すぎます。嫌な予感がしました。

探偵さんの車を探しながら付近を徘徊していると、それらしき看板を目立たないように掲げる、とある団体の建物が。

聞いたことのある団体です。まさかこれが相手なのかと戦々恐々としながらさらに付近をうろついていると、その団体の人間らしき方に「職務質問」されてしまいました。わあ、予感があたった(´Д`;)

こういうところは、愚鈍な私が効力を発揮する場面です。

「駅が分からないんです(*´∀`)」

「なんだ、迷ってるのか。あっちだよあっち(´Д`;)」

「わざわざありがとうございました(*´∀`)」

まったく不審に思われずに済みましたw

指し示された駅の方向へ歩いていかざるを得ませんでしたが、その道すがら、探偵さんの車が時間貸し駐車場に停まっているのを発見しました。

ついに見つけました! この周辺です。

探偵さん自体を見つけることはできませんでしたが、おおよその見当がつけられました。

駅に着いてすぐ、KENJIさん宅に成果報告の電話をします。

お父様が慌てて受話器を落としながら出てくれました。

残念ながら、細かい住所の特定はできなかったが、半径100m以内までは割り出せたと伝えると、たった1日でここまで進展したためか、お父様は感情がいっぱいになり言葉が詰まったようです。

お母様が何もしゃべらないお父様から受話器を強引に奪い取る音がしますw

この先は、まず探偵の調査報告を待とうという判断がKENJIさんとお母様によって受話器の向こう側で下されました。

お父様が何か叫んでいましたがよく聞こえませんw

そして4日後、探偵さんから調査報告を受けます。すごいスピードです。

住所が分かっているのだから当然とはいえますが。

なんと、家のドアから出てくる瞬間の写真をつけてくれました。

見知らぬ男性と一緒です。この写真を元にすれば細かい住所まで割り出せるはずです。

「きちんと働いてもいるようで、朝出かけて、夜7時には家に戻っていました。その家のすぐ近くの職場で働いており、素行にまったく問題はありません。2人の間に問題点は見られず、よくある恋人同士が、同棲している状態と言えます」

お父様はものすごくがっかりしたような、それでいて安心したような顔をされておりました。

成功報酬を探偵さんへ手渡しし、感謝の言葉とともにその場からお返しした後、KENJIさんは押入れから出てきた私とともに、親御さんへあの日記を手渡しました。



「SK8Sが現場を調べてきたところ、実は、ある団体が絡んでいる可能性が高い。Kが残したこのメモはこういう意味に受け取れるんだ」

近所にその団体の施設があったこと、その団体が使用している言葉と符合することを、青ざめる親御さんへ私から説明した後、家族会議をするというということで、その場からおいとましました。

「連れ戻すための説得をすることに決まったよ」

後から電話でKENJIさんが家族会議の結果を教えてくれました。

この瞬間から、私たちの長い闘争が始まったのです。

家族会議で重要視されたのは、成人であるからという理由により信教の自由だけは確保しようということです。

問題とするのは親への相談なしに、連絡がつかない状態となったこと、その一点でありました。そしてまだ若いということもありますので、一旦家に帰るべきである、というのが結論でした。

いずれしっかりとした年齢となってから外で暮らすのは構わないが、今はその時期ではない、ということです。

ただしこの結論も相当のジレンマの下にやっと出たものです。

ご家族の心理としては、正体不明の団体に娘が所属しているかもしれない、というだけで卒倒モノです。しかしまだ完全に確定したわけではなく推測です。

まずは落ち着いて話し合いをしなければ始まらない、ということになりました。

それで物事がうまく収まれば何も問題はないのです。

「想像通りというか、やっぱりえらいことになっちまったんだよね(´・ω・`)」

じっくり話をしてきたKENJIさんたちご家族の話を翌週聞いてみると、話はこじれすぎるほどこじれたようです。

「なぜこの場所が分かったの?」というKさんの疑問と、「なぜ突然連絡も無しにいなくなったの?」というご家族の疑問がぶつかり、そこだけで最初のひと悶着です。

「探偵に頼んだから」というご家族の答えは良かったのですが、「成人しているのだから勝手だ」というKさんの答えから第二ラウンドへ。

成人していたとしてもまだ分別のつきにくい年頃である、いやそんなことはない、そういった部分が平行線となってしまいました。

そして「そもそもあなたは誰なのですか、うちの娘を突然連れ去って・・・」と

Kさんと一緒に暮らしている男性に飛び火します。

全て、ご家族としては正当な質問だと思われました。

その男性は想像通り、例の教団に勤めている方でした。

恐る恐る、どのような活動をしているのか聞いてみると、お布施を集めたり信者を増やしていくお仕事だったようです。

Kさんも見習いとして同じ仕事をし始めているようでした。

その内容はどうにも胡散臭く、想像以上にかなりまずい感じです。

挙句の果てにご両親に対して二人がかりで布教を始めてしまったようで、怒りの頂点に達したお父様が血圧が上がりすぎて気分が悪くなりダウン。

Kさんからは「教団を辞める気も、家に戻る気も無い」ということが改めて口にされ、交渉は決裂してしまいました。

探偵の方が仕事先については言明を避けていましたが、やっぱりかという感じです。

KENJIさんは最後にたった一つだけでいいから教えて欲しい、と

Kさんに質問をしました。

「今さ、幸せなの?」

「幸せじゃなかったらおかしいでしょ!!

 何も分からないんだったらもう来ないでよ!」

Kさんの目が、もうおかしかった、そうKENJIさんは私に言いました。

とても幸せそうに見えない、何かに追われている目だったそうで、時間をかけて説得しても無意味である、そんなふうに感じられる交渉だったそうです。

ここからどうしたらいいのか、まったく分かりません。

それでも足を運ぶしかないのか。

次の日にお母様がもう一度行くと、やはり今度は完全に門前払いされてしまいました。

もう話をすることすらできません。

ここでこの事件は一旦、完全に暗礁に乗り上げてしまいました。

そして一ヶ月、何の進展も無いまま、ご家族の苦悩の時間が続いていきます。

KENJIさんと会って話し合いをしても、何もアイデアは出ません。

いろいろと世話になっておきながら、私が力になれることはもう何もないのか。

親しい人の苦悩は、自分自身の苦悩となります。

なんとかしたい、でも何も出来ない。とてももどかしいものです。

「あっ、そういえばSK8Sのお祖父さんの兄弟がなんかやってなかったっけ?」

あるときKENJIさんが突然、私の大叔父のことを思い出しました。

お寺のことなどに、確か詳しくなかったのではないかということを子供の頃の記憶をたどって思い出したのでした。

お寺と新興宗教とでは全然違うのではないかと思ったのですが、他に良いアイデアもありませんので、藁にもすがる思いで少し体調を崩して入院中の大叔父を頼ることにしました。

あまり面識の無いKENJIさんは遠慮して、とりあえず私のみで大叔父に面会すると、大叔父は真剣に私の話を聞いてくださった後、驚愕の解決法を提示しました。

「時間をかけてでも、やるべきだ。SK8Sたちがやるんだ」

「はいっ!?何を!?@@;」

「完全論破しろ」

「どのような論破の仕方ですか!?@@;」

「相手の全ての理論を打ち破る概念を提示するんだ。新興宗教には論破しやすいポイントが多くあるはずだ」

「その概念はどこから得るんですか!?@@;」

「小さい頃に教えてやってただろう。またみっちり教える。次はKENJI君も連れてきてノートを持ってきなさい。」

大叔父は近所のお寺の檀家をやっていましたから、若い頃そういう勉強をしたのだそうです。そして私たちは仏教、神道、キリスト教、イスラム教、さらに数ある新興宗教のそれぞれの特徴や聖典の内容・発生している矛盾点などを、二週間かけてみっちり教わりました。

「よしだいたい覚えたな。ここから仏教をさらに深く掘り下げるぞ」

「「まだ深みがあるんですかっ」」Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)

確かに学んでみると、仏教の奥深さがだんだん分かってきました。

今まで表面的に捉えていたことが全く違う意味であったりなど、人生に役立ちそうな事柄がとても多かったのです。まさに人生の為の哲学でした。

Kさんを説得するための材料が、コツコツと私たちの中に蓄えられていきます。

「だいぶ分かってきました。もうこれで戦えるのですか?」

「まだだっ(゚Д゚#)」

「「さらに深いんですかっ」」Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)

大叔父に相談してから一ヵ月半が過ぎようとしていました。

時折大叔父の奥様のよし江さんも交えながら、病院のベッドの横で私たちは真剣にノートに大叔父の話を記録し、読めと言われた書物も大叔父の家から借りてきて読んだりしていました。

生きていることとはどういうことなのか。

人間とはどういうものなのか。

なぜ、そのような事柄が起きるのか。

どういう因縁があるのか。

何をしなければならないのか。

どうやって生きていけばいいのか。

そういった疑問に対する答えが、少しずつ明らかになっていくのです。

心の中に一本の道が、すっと、通っていくような感覚が湧きあがってきたのは、大叔父の説明がとても分かりやすかったからなのでしょう。

ある日、大叔父が突然話を止め、その突然の止まり具合に私たちが驚いて見上げると

「時間が来た。うちの家内を今すぐ呼べ」

とりあえず言われたとおりによし江さんを呼ぶと、大叔父は静かに目を瞑って何か力を蓄えているように見えました。

そして、30分ほどしてやってきたよし江さんが大叔父に声をかけると、思い出したように目を開け、穏やかな顔で話し始めました。

そこでやっと理解した私たちは、突然のことに涙が止まりません。

「これで俺はやり遺したことはもう何も無い。

 あとは息子と、この子達の面倒も見てやってくれ。

 遺言は前に弁護士に渡してあったものを引き出して読みなさい。

 息子への言葉はそこに書いてある。

 ・・・

 KENJI君、少しの間だったが君は素晴らしい青年だ。

 きっと、この国を支える人間になるだろう。頑張りなさい。

 SK8S、お前が好きだったこの手のように、 お前もよく働く人間の手になるよう頑張れ。お前ならできる。

 君達はこれから頑張って一人の人間を助けるんだ。

 ・・・

 よし江、いろいろ苦労かけたな。

 また来世で会っても、一緒にやっていこう。

 ああ、いい死に方ができたよ。

 ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・」

そう言い遺すと、大叔父はもう二度と目を開けることはありませんでした。

義大叔母は連絡を受けたときにもう分かっていたようで、病院到着時に主治医への連絡を促し、息子さんへの連絡も看護の方へお願いしていたようです。

話が終わらないうちにバタバタと医師がやってきていました。

私たちはそこで初めて、大叔父が残りわずかの時間を使って、得難い大切なことを伝えようとしてくれたのだと気づき、改めて深く感謝し、大叔父を見送りました。

そのような大切な時間を、私たちと、私たちが救うべきKさんのために費やしてくれたのでした。

病名は葬式の席で初めて聞きました。

とても話ができるような状態ではなかったのにまったくそんな素振りを見せなかったことに、改めて驚いたものです。

泣きすぎてほとんど味が分からない刺身を食べながら煙突を見上げ、私とKENJIさんはその遺志を確かに、胸に刻んだのです。

「よし、行こう」

KENJIさんのご両親から論戦を仕掛けることについて承諾してもらい、私たちは再びKさんの住まいへ向かったのです。

KENJIさんのアイデアで、念のためにお腹に週間少年ジャンプをセット。

こんなアイデアが出てしかも採用されるところなどは若気の至りです。

既に私たちには、揺るがない柱のようなものがあります。

まったく気後れすることなく、呼び鈴を鳴らしました。

「今日は話し合いに来たよ」

「だったらじっくり話ができる所でやるからね」

Kさんの連れ合いの男性(以下、Iさん)が突然、そのような提案をしてきたため、これは予想外、私たちは例の教団施設へ案内されていきます。

このあたりから私の記憶が飛んでいます。

予想外の事態に対処するためすぐに「彼」が私の代わりに出てきていたのです。

意識が戻った瞬間にはとんでもないことになっておりました。

私たちは儀式等を行うような広間へ案内されました。

50畳、100畳、そのぐらいの大きな広間です。

そして見知らぬ男性たち5人ほどに周りを囲まれています。

誰がどう見ても絶体絶命です。

Iさん ところで、どんなことを話し合うおつもりでいらっしゃったんでしょう

か?

彼らは人形のような微笑みを私たちへ投げかけ、Iさんはそのような質問をしてきました。

KEN「今日は議論をしに来ました。まずKさんが現在親元を離れていることについて。」

Iさん「成人しているのだから、一切そういうことについて議論の余地は無い、考えが合わないのであればもう二度と会う必要もないだろう。」

私たちは大叔父から教わった概念を説明し始めました。

実際にはもっと長いやりとりなのですが、多少省略して書き記すとこのようなやりとりでした。

グロウ「親が心配している。親を心配させることは親不孝である。自分を産んでくれた親に対して、恩を報いるどころか心配させるとは言語道断。もう来ないでとは何事か。この世に親と子以上の血のつながりの濃さは無い。親の言うことは若いうちは聞くもんだ。誰だって一人だけで生きていけるわけではない。自分の腹を痛めて産んだ子が頭まで痛める状態になっているのを何とも思わないのか。」

KEN「本当にもう会わないつもりなのか。本当か。それは無いだろう。お袋のメシ、また喰いたいだろう。また一緒に温泉旅行に行こうよ。お袋にあんまり心配かけるなよ。」

こういった感じで言葉を発していくと、Kさんの目が完全に泳いでいます。心に響いています。

Iさんだけでなくほかの男性たちも驚いて応戦してきます。

Iさん「心配なのは布教活動の素晴らしさが分かっていないからだ。一緒に布教活動をしていけばきっとご両親も分かってくれるはず。あなたたちもやってみませんか。教祖の素晴らしさが分かると思います。」

教団「素晴らしさは修行したら分かる。一度泊り込みで修行してみないか。座禅

したりできるぞ。」

グロウ「人の道を外れたことをする教団の布教に素晴らしさなど無いことは、誰が見ても明らかです。成人して間もない人間を、親への連絡を絶つように仕向けて親不孝なことを促す、それは道理に反しています。二度と会う必要が無いと言ったのに分かってくれるはずと覆したのはなぜですか。」

Iさん「それは、Kがそう言ったからそれにまかせただけだ!」

KEN 「Kに責任を擦り付けるのはやめてください。まだ20歳なんですよ。そういうことはいけないことだと教えるのがIさんの役目なのではないですか。親は大事にするものだ、ということをKに教えることができなければ、Kはいいかげんな育ち方をしてしまうじゃないですか。その責任がIさんに取れるのですか。親を大事にしない家系が子々孫々まで繋がっていくと思っているのでしたら間違いです。Iさんにお子様ができても、お子様がIさんから離れていくのではないですか。それでもいいという親なら、私は人間として信用できません。K、本当に自分に子供ができて、少し歳がいったら自分から離れていく、そういう家族でいいと思うのか。

教団「それは論点のすり替えだ!布教活動は良いことなのに、それを分からない親が悪魔なんだ!お前らも魔だ!お前ら、地獄に落ちるぞ!」

初対面でお前ら呼ばわりです。

この時点でかなりヒートアップしていますね(´Д`;)

KENJIさんはジャンプを腹に入れておいてよかったと思ったそうです。

そしてさらに教義面の議論へと移っていきますが全部論破。

Kさんも次第に目の動きが定まっていきます。

そしてとどめに教祖の意味を崩壊させなければいけません。

グロウ「教祖はまだ生きてらっしゃいますよね。生きているうちに神と崇められるということは相当な実績をお持ちなのですか?このご時世に人間の煩悩をしっかりと消し去り他者のために働く大きな心をお持ちなのですよね。」

教団「え?そうだよ分かってるじゃないか?」

KEN 「それなのに不必要なほど多くのお布施を集めているのは、煩悩の発露なの

では?そのお布施がどう使われているか皆さんご存知なのですか?」

Iさん「それは・・・ え?」

教団「え?」

グロウ「教祖がお乗りになっているお車、たしかフェラーリその他多くをお持ちで

すよね。別にカローラでもクラウンでもいいんじゃないですか?フェラーリに使うお金があったらもっと多くの人を救えるのでは?私ならばそのお金を身寄りの無いお年寄りのための施設を作ったり、孤児院を立てたりしますよ。フェラーリ1台分じゃ足りないですけど、いろいろ無駄をしてますからできますよね。ここの設備もそうですよね。無駄に思える内装があまりに多すぎませんか。ここの美術品はなんですか。西洋の絵画ですか。教義にどう関係しているか教えて欲しいのですが。」

教団「・・・そんなことは関係の無い話だ!」

KEN「インターネットでも週刊誌でも出てましたので、公然の事実だと思います。」

Iさん「これは僕とKの問題なんで!教祖の話はしないでくれないか!あ、その話は確かデマだって言ってたぞ!」

グロウ「Kちゃん、帰ろう。誰が信用が置けて、誰が信用が置けないか、良く考えるんだ。」

教団「魔の囁きに乗るんじゃない!!!」

KEN「帰るぞ。家へ。」

Iさん「待て!ちょっと待て!連れて帰ったらどうなるか分かってるんだろうな!」

グロウ「どうなるのですか?あなたたちが私たちへ何かするつもりなのですか?」

教団「ただで帰すわけないだろうが!」

私たちは彼らにぐるりと取り囲まれてしまいました。

ただ、それ以上物理的なことは何もしてきません。そして呪文を唱え始めました。

自覚しているのかしていないのか、完全に気持ちの悪い団体です。

なぜ呪文をそこでww 向こうもテンパっていたようです。

セリフといい行動といい、もう完全に崩壊しています。

Kさんももう目がはっきりしています。

グロウ「Kちゃん良く見て。信じるのはこれじゃない。親だよ!」

Kさん「私分かりました!実家に帰ります!どいてください!! つか、どけよ!

どけ!」

Iさん「( ゚д゚)ポカーン」

教団「( ゚д゚)ポカーン」

KEN「そういうことなんで、もう失礼しますよ!お手数ですが、荷物はあとで着払いで送ってください。では!」

そして3人でダッシュで退散。しかし教団員とIさんが後ろから追いかけてきま

す。

追いかけて何をしようとしているのでしょう。恐ろしいです。

ここで私の意識が戻ります。何が起きたのか分からないですがとにかく走るしかない状況であることだけが分かりましたのでKさんの手を引いて走り続けました。

ちょうどホームへ電車が来ていて、などという刑事ドラマのようなことは起こらずホームで捕まってしまいますが、駅員さんに助けを呼び掴みかかってもらえたので、なんとか逃げ切れました。駅員さんGJです。動き出す窓越しに教団員に殴られる駅員さんが遠ざかるホームに見えたので、心の中で手を合わせておきました。

ごめんなさい、ごめんなさいと泣きながら謝るKさんと、もう終わったことだからいいんだと宥めるKENJIさん。

そして、何が起きたのか整理してもよく分からない、電車の中で息切れする私。

「とりあえず、これは勝った・・・のか?@@;」

「これ以上無いぐらいに勝ったじゃねえかw また記憶飛んでるのかw」

「ドロップキックは?」

「大丈夫大丈夫今回は出てないw」

「そうか、けが人が出なくてよかった・・・後で何があったか教えてくれ」

「;`;:゙;`>(;゚;ж;゚; )ブッ」

しかし問題は、このままで本当に終わるのかということでした。

懸念は残しつつ、私たちはKENJIさん宅へ凱旋しました。

ご両親の笑顔、私はこれが見たかったのです。

喜びと感謝に爆発しているお父様に勧められて焼酎を限度いっぱいまでいただき

ながら

KENJIさんから現場での私の立ち回りを聞いたり、大叔父の教えてくれたことについて思い出し語りしておりました。

先に酔いつぶれたお父様を置いて、お母様とKENJIさんとKさんに見送られて

私も久しぶりに安心して帰宅しました。やっと安眠できます。

「SK8Sスマン、すぐ来てくれ!」

翌朝、KENJIさんからの電話でその安眠は破られました。

「家に彼らが来ていて押し問答してるんだ、すぐ来てくれないかスマン」

私がKENJIさん宅に到着すると玄関先にIさんともう2人、昨日の教団の人と思われる方たちが来ていました。

飼い犬の健太郎君が吠え掛かるのをお母様がなだめています。

昨日論破したのにまた論戦をする気なのでしょうか。

少々近所迷惑になったとしても玄関から上げるわけにはいきません。

Kさんには自室に篭っていただき出てこないようにしてもらいました。

お父様は仕事に出られておりましたので、その場は私とKENJIさんで対処することにしました。

途中から話に加わってみると、教団についての説明をしに来た様子。

勝手に上がろうとしてきますので、玄関をガードします。

彼らの顔は笑っていましたが目が完全に無表情でヤバさ100%です。

落ち着いて話をしよう、悪いけど玄関先で。

そうやってまずは一つ段落をつけました。

神仏の尊さという面についての論戦。

教義は神仏が最終的に教祖に紐づいているので、教祖の尊さを説明してくる彼ら。

いや、教祖も一人の人間であり、悩める人間なのだからそこまで完全ではないと反論。

「じゃあ会ってみなさい」

「会って同じように反論していいのですか?全部論破してしまいますよ」

「できるものならやってみなさい!」

「でもお忙しいでしょうからここまで来られるのは大変ですよね」

「え!?」

「こちらから行く理由はないですから」

「あ・・・」

「とりあえず今日はお引取を」

「ま、また来ます」

「拒否します」

Iさんは結局何もしゃべらず、ほとんど連れの方が話をしていました。

何しに来たのか、自分では何も出来ないのだろうかと

私たちに思われるだけです。

もう来ないでも良いのですが、また来ると言い残して彼らは引き上げていきました。

予想通りそれから毎日、彼らは押しかけるようになりました。

毎日毎日、雨の日も風の日もめげず。

私も授業の無い日はKENJIさん宅で待機して、可能な限り対処しました。

たまに話をしても話の内容がどこかズレているため、話している意味が彼ら自身、よく分かっていないようです。

次第に話の内容が誹謗へと変わっていきます。

「地獄に落ちるぞ!」→「地獄に落ちろ」

「魔に取り憑かれるぞ!」→「魔にやられて死ね」

もう脅迫ですね。これを毎日やられると精神的におかしくなってきます。

そのあまりの異様さに、たまたまそこを通りかかった方が通報してくださり、警官が来てつまみ出されていきました。

もはやIさんは来ず、教団の中の熱心な人だけが来ていたようです。

それでもまだやって来るので、それからは彼らが来たら

すぐに通報するようになっていきました。

「またあいつらか(´Д`;)」

「いつもすいません(´Д`;)」

「でも妹さん戻ってきてよかったね(゚∀゚)」

「その節はお世話になりました(゚∀゚)」

駅前交番の巡査部長が姿を見せると彼らもすぐに逃げ去ります。

巡査部長が進言してくれたおかげで、KENJIさん宅のまわりを

地域の警官の方たちが重点的にパトロールしてくれるようになりました。

教団の人たちも時間を微妙にずらしてやってくるようになりました。

いたちごっこになってしまっており、もはや嫌がらせです。

KENJIさんは彼らが来るたびに怪訝な顔をして対応します。

そんな飼い主の雰囲気を感じ取ったのか、飼い犬の健太郎君はある日突然、彼らにマーキングするようになってしまいました。

「ピンポーン」「うわぁっ!!」

「あ、健太郎www こらwwwww」

後でよくやったと褒めておきましたw

通報するまでもなく帰っていただけるのでナイスです。

困り果てた頃の大叔父の四十九日法要の席で、義大叔母のよし江さんに状況報告をすると、遺言状に書いてあったことを教えてくれました。

「何か困ったことがあったらご住職様に相談しなさい」

その法要を催していらっしゃったご住職様に本当に突然ですが相談をさせていただきました。

「娘さんと親御さんをここへ連れてきなさい」

次の日曜日、KENJIさん一家全員でお寺にお邪魔して

ここまでの経緯を全て話すと、ご住職様はすべて分かってくださいました。

「全ての責任は私が取る。一時の間、お嬢さんをここに住まわせなさい。その人たちは全部お寺に来るように仕向けなさい」

「「「いいんですかっ」」」Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)

「もう家に行かないでここにいなさい。荷物は親御さんが持ってきなさい」

すごい方が味方になってくださいました。

その日のうちに着るものをご両親がまとめてお寺へ持って行きました。

次来たら、彼らをお寺に誘導しなければなりません。

でも毎日来るので、もうその日にやってきました。

「妹は引っ越したんで、話があるならこの住所に行ってください」

「え?そうですか。うわぁっ」

健太郎君のマーキングを避けつつ、彼らはお寺へ向かいました。

「今あいつらがお寺行ったぞ。今お寺に連絡しといた。俺も行くんでSK8Sも来るか?」

何が起きるのか知りたかったので、すぐに私も向かいました。

後から出たはずなのですが彼らより先に到着したようで

10分ほど待っていると、彼らがやってきました。

「どうぞこちらへ」

ご住職様が彼らを応接室へ誘い、私たちも同席させていただきました。

お寺とは思っていなかったようで彼らも動揺しながら席に着きます。

そして宗教のプロであるご住職様による完全論破が始まりました。

しかしそこには、私たちの論破方法とは違い、慈悲の心がありました。

すべて、彼らのためを思って言っているのです。

七時間にわたる真のお説教の末、なんと彼らは教団を辞めると言い始めました。

やはり本物は違うのです。そして大叔父に感謝です。

「抜けるといろいろ困ることがあるだろうからここに泊まりなさい」

「「「いいんですかっ」」」Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)Σ(゚Д゚;)

「教団への連絡は私からしておくから、責任は全部私になすりつけなさい」

最後には彼らが泣き始める状態に。

どうもお布施のノルマが厳しかったらしく、いろいろと不満があったようです。

最後の一言がトドメになりました。

「うちの寺はお布施とかいらないですからね。どうしても御供養したくなったら1円でもいいから自分の経済状況と気持ちに見合った額でいいんですよ」

Σ(゚ДΣ(゚ДΣ(゚ДΣ(゚ДΣ(゚ДΣ(゚ДΣ(゚Д゚;)

彼らは憑き物の落ちたようなさっぱりとした顔をしていました。

脱退者が合計四名となりましたので、教団側では大変な騒ぎとなったでしょう。

彼らも次の日から仕事探しが大変だろうと思われましたが、全員田舎へ帰るという話になり、しばらく心を落ち着けるということになりました。

次の日から教団の訪問はなくなりました。

うかつに手を出すと脱退者が止まらないと思ったようです。

しかしまだ一人、収まらない人がいるはずです。Iさんです。

みんなの心が落ち着きを取り戻した数日後、KENJIさん宅に新たな災難がふりかかります。


未完? たしかもう一ページ、最終ページがあったと記憶しています。 どなたか続きを持っていらっしゃる方が居られましたら頂けると嬉しいです。。。

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